2025/8/5, Hiizu Nakanishi

スリンキー・コイルの落下運動のノート2

一定の張力$T$で引っ張られていた場合
重力ではなく一定の張力でスリンキー・コイルの下端が引っ張られていた場合、 上端を離したときにコイルが縮んてゆく速度と、 コイル中を伝播する波の速度を求める。

静止したコイルの平衡状態

コイル全体の質量を$M$、バネ定数を$K$として、 コイルの各部分を$\ell\in[0,1]$で指定する。 すると、コイルの微小部分$d\ell$の質量$m$およびバネ定数$k$は \[ m = Md\ell, \qquad k = {K\over d\ell} \] で与えられる。 コイル全体に一定の張力$T$がかかっていた場合には、微小部分$d\ell$の伸び $dz$は \[ dz = {T\over k} = {T\over K}\, d\ell \] なので、コイルの平衡状態は \[ z^0(\ell) = \int_0^{z^0}dz' =\int_0^\ell {T\over K}d\ell' = {T\over K}\,\ell \tag{1} \] で与えられる。

スリンキー・コイルの収縮速度

上端を離した後、 $ 0< \ell < \ell_{\rm top}$までが縮退して一体となって運動して、 $\ell_{\rm top}<\ell<1$は静止状態のままだとすると、 コイル全体の重心$z_G(\ell_{\rm top})$は \[ z_G(\ell_{\rm top}) = {1\over M}\left( M\ell_{\rm top} z^0(\ell_{\rm top}) + \int_{\ell_{\rm top}}^1 d\ell' M z^0(\ell') \right) \] となる。時刻$t$におけるコイル全体の運動量は$Tt$なので、上式を用いて \[ Tt = M{d z_G(\ell_{\rm top})\over dt} = M\ell_{\rm top} {d z^0(\ell_{\rm top})\over dt} %{d z^0(\ell_{\rm top})\over d\ell_{\rm top}} \dot\ell_{\rm top} \] となり、これより \[\ell_{\rm top}(t) = \sqrt{K\over M}\times t \] と求まる。

バネの上端の速度は \[ v_{\rm top} = {d z^0(\ell_{\rm top})\over dt} ={T\over M}\; {t\over \ell_{\rm top}} = {T\over \sqrt{MK}} \tag{2} \] となる。 これは、張力$T$のスリンキー・コイルを伝わる波の速さに等しい。

スリンキー・コイルの波の伝播速度

コイルの伸びは$dz$なので、張力$\sigma$は \[ \sigma = k\, dz = K{\partial z\over \partial \ell} \] と与えられる。 コイル中を伝わる波の式は \[ M\, d\ell\, \ddot z = K\left( {\partial z\over \partial \ell}\Bigg|_{\ell+d\ell/2}- {\partial z\over \partial \ell}\Bigg|_{\ell+d\ell/2}\right) % \quad\Rightarrow\quad % {\partial^2 z\over\partial\, t^2} = {K\over M}{\partial^2 z\over\partial\, \ell^2} \] 音速$c$は、式(1)より \[ c = \sqrt{K\over M}\, {d z^0\over d\ell} = {T\over\sqrt{MK}} \tag{3} \] となり、コイルの収縮速度(2)に等しい。

これは、重力のような外場の影響がなく一様な張力のもとでは、

収縮したスリンキー・コイルの伝播速度はコイル中の情報伝達速度に等しい
ということを表しているようだ。

それに対して、コイルを鉛直にぶら下げた場合には、 下にゆくほどコイルの伸びが小さくなり、 それに比例してコイル中を伝播する音速は遅くなるが、 収縮したコイルが落下する速度の減速度はそれよりも小さく、 コイル中を伝播するパルスよりも先に、収縮して一体化したコイルが落下してくる。