実験室系: 振子系 |
振子の角度:
$\varphi$ = 度
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振動の向き:
$\theta$ = 0度
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散逸:
$\alpha$ = 0.02 $\omega_0$
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振幅:
$f$ = 0.06 $\ell$
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振動数:
$\Omega$ = 70 $\omega_0$
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$\Omega f = $ 1.8 > $\sqrt{2}\;\omega_0\,\ell$ |
このシミュレーターを用いて、 Kapitzaの振り子をシミュレーションできます。 初期設定では振動なしで、わずかに散逸(まさつ)が入っています。 シミュレーションをスタートすると通常の単振り子の運動をします。 振動ボタンを押すと支点の振動が開始され、 タイミングによっては振り子は回転を始めたり、往復運動をします。 散逸を大きくすると、多くの場合、 下にさがった状態で止まってしまいますが、 振り子の角度を上に持ってゆくとそこから自然に倒立状態で安定化します。
シミュレータでは、腕の長さ $\ell$ の振子の支点を、
鉛直から角度 $\theta$ 傾いた方向に
\[
f(t):=f\sin\Omega t
\]
の振動を加えています。
数値的に解いた方程式は、鉛直上向きから測った振子の角度を $\varphi$ として、
\[
\ddot\varphi = {g\over\ell}\sin\varphi + {\ddot
f(t)\over\ell}\sin\big(\varphi-\theta\big) -\alpha\,\dot\varphi
\]
です。ここで、$\alpha$は現象論的に導入した散逸パラメーターです。
パラメーターの値は、長さの単位を $\ell$、
時間の単位を$\sqrt{\ell/g}:=1/\omega_0$ に取ったもので与えます。
ここで、$g$ は重力の加速度です。
この振子は支点の振動方向に安定化する傾向があります。
散逸を大きくしておいて、振動の向きを回転させると、
それに従って振り子の向きも回転します。
振幅 $f$ と振動数 $\Omega$ の積 $f\Omega$ を大きくすると、
振り子はより忠実に振動の向きに従います。
その解析によると、
支点に加えた振動の振幅 $f$ が振子の腕の長さ $\ell$ よりもずっと小さく、
角振動数 $\Omega$ が振り子の角振動数 $\omega_0:=\sqrt{g/\ell\;}$
よりずっと大きい時、条件
\[ \Omega f > \sqrt{2}\; \omega_0\,\ell
\]
を満たせば、振り子の倒立状態が安定化する。
上下振動を加えた場合、上向き方向だけではなく下向き方向も安定化するので、
倒立状態を実現するには、振り子を水平方向より上に持ってゆく必要がある。
また、摩擦がないと振動によって与えられるエネルギーで振り子は回転したり、
釣り合い角を中心に振動し続け、倒立状態で静止することは無い。
散逸を大きくして斜め方向に振動を加えると、振り子は斜め方向に安定化する。
詳しい理論解析は、
このリンクの
Kapitzaの振子の理論
を参照してください。
理論
このような、
支点が高速で振動する振り子の理論的解析はKapitzaによって与えられた
(ランダウ・リフシッツ、理論物理教程「力学」第30節)。